新型コロナウイルス感染症と雇用調整助成金について ※一部追記

 新型コロナウイルス感染症に関連し、政府は「雇用調整助成金(特例措置)」の利用を呼びかけています。

 「雇用調整助成金(特例措置)」は、①新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高、生産量などの指標が前年同月比で5%以上減少している場合に、②労使間の協定に基づいて従業員を休業させ、法定以上の休業手当を支給していると、③その5分の4から10割の額を助成する、とされている制度です。

 この助成金ですが、4月29日現在、約20万件の利用相談に対し、実際に申請に至った件数は約2,500件、支給に至った件数はわずか282件に留まるとされており、書類の量の多さや要件の厳しさなど、制度の使いにくさが指摘されています。(4/28 TBS『ニュース23』等より)。

 もっとも、4月以降は特例措置により大幅に支給要件が緩和されており、今後も一層の簡略化を行う予定とのことですので、支給実績も(数の大小はともかく)増加していくものと思われます。

 以下、当方でも事前にご説明させていただいている点をまとめました。

 

① 実際の休業手当相当額が助成される訳ではない

1日あたりの助成額は、『前年度の雇用保険被保険者全体の1日の賃金の平均額』をもとに計算します。

この金額に実際に支給した休業手当の支給割合(60%以上)を乗じた額を基準賃金とし、その4/5から10割の額が1日あたりの助成額となります。ただし、助成額の上限は8,3008,330円とされています。

「休業手当の4/5から10割を助成」という説明を額面通りに受け取ってしまいますと、思わぬ負担が生じることとなります。

 

② 事前に休業について労使協定の締結が必要

この助成金を受給するには、休業前に①休業の時期と日数 ②休業の時間数 ③休業対象となる労働者の範囲と人数 ④休業手当の額の算定基準 について、労働者の過半数による労働組合の代表(ない場合、労働者の過半数を代表する者)と会社の間で書面協定を結ぶことが必要です。

また休業日数については、申請期間の各月の休業延べ日数が所定労働のべ日数の1/40以上(大企業は1/30以上)である必要があります。※

※ 例えば雇用保険被保険者数40人で月所定労働日数が20日のとき、月所定労働日数ののべ日数は800日です。休業はこの1/40ののべ20日以上、1人当たり月0.5日以上実施する必要があります。

 

計画策定の際は休業実施予定について対象者、実施日、実施時間数等を一覧できる計画表等を用意し、検討されることをお勧めします。

 

③ 適正に労務管理されていることが前提

この助成金はもともと休日である日に休業をした場合には支給されません。このため、休日や労働時間等が適正に管理されていて、給与計算に反映されていることが申請の前提となっています。

また不正受給とされた場合の受給額(+延滞金+受給額の20%)の返還、事業主名の公表などについて誓約することが申請の条件となっています。

 

※本記事は4.29時点の情報をもとにしています。上記の報道も呼び水になったようで、5.1時点では関連する報道が増えてきました。ただ私見ですが、助成金の性質上、手続き書類を簡略化するにしても、賃金台帳や出勤の記録、所定休日と賃金の関係などを確認するプロセスを省略することは難しいように思われます。

※上限額に誤記がありましたので修正しました。また金額については、連休中にさらなる緩和が行われています。詳細は厚労省ホームページで最新情報をご覧ください。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html