新型コロナウイルス感染症に関連する欠勤・休業と保険給付、休業手当等の関係について※一部追記

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により、従業員が職場を欠勤せざるを得ないケースが増えてきています。

 今回は新型コロナウイルス感染症に関連する欠勤について、労災保険・健康保険などの保険給付、労働基準法による休業補償・休業手当等との関係をまとめました。労務管理のご参考になれば幸いです。

※ 記事は4.29時点の厚労省Q&Aなどを反映しています。随時、見直しが行われていますのでご注意ください。
※ 濃厚接触者に自宅待機要請があった場合の対応等、下線部に追記しました。2020.5.2

 

1.従業員本人が感染したことによる欠勤(仕事と関係があるとき)

労災の対象となる可能性があります。この場合、会社は休業開始から3日間、法定の「休業補償」(=平均賃金の60%以上)を払います。

4日目以降、働けず、給与の支払いのない期間について(公休日含む)、労災保険の休業補償給付(平均賃金の80%)の給付を受けられます。

※ 平均賃金:「直前の賃金締切期間直前の3ヶ月間の給与総額」を「その間の暦日数で割った金額」と「勤務日数で割った額の6割」を比較し、大きい方の金額

 

2.従業員本人が感染したことによる欠勤(仕事と関係ないとき)

通常の病欠と同様の取扱いで、自覚症状があったことによる自宅待機の期間も同様です。4日以上連続して休業し、労務不能であって賃金支払いがないことについて医師と会社の証明を受けられると、4日目以降(公休日を含む)、協会けんぽ等の健康保険(または国民健康保険組合)から傷病手当金の給付を受けられます。

また厚労省は市町村の国民健康保険の被保険者について、被保険者が被用者(給与所得者)の場合、9月末までの期間、「新型コロナウイルス感染に関する傷病手当金」を支給するよう要請しています。

給付額は「協会けんぽ」等では支給開始日以前1年間の標準報酬月額の平均額の1/30の2/3の日額が支給されます。「国民健康保険組合」では、組合員区分などで定められています。「市町村の国民健康保険」では直近の3ヶ月間の賃金総額を働いた日で割った額の3分の2を日額として支給するとのことです。

 

3.従業員本人が感染した恐れがあることによる欠勤

自覚症状があったため自宅療養後、回復し、医師の証明を受けられないときは、会社から「療養により労務に服さなかった」旨の証明を受けることで傷病手当金の支給が認められます。

賃金については、本人の判断によるときや、症状により勤務不能であるときは通常の病欠と同様の扱いです。

仕事と関係があった場合には、労災給付を受けられる場合があり、この場合は1.と同様です。

 

4.従業員本人は無症状だが濃厚接触者となったことによる欠勤等

労災や健康保険などの給付の対象にはならず、本人が自主的な判断により欠勤した場合、通常の欠勤と同様の扱いとなります。

濃厚接触者となったことにより、保健所から自宅待機の要請があった場合の欠勤については、下記5のとおりです。(2020.5.2追記しました。)

濃厚接触者に対し、保健所から自宅待機の要請が出た場合で、その要請が解除された後などに、会社側の自主的判断により休業させるときは、会社は法定の「休業手当」(=平均賃金の60%以上)を各休業日について支給します。(公休日は支給対象外)不可抗力によりやむをえず休業するケースについては下記5のとおりです。

 

5.保健所の要請による濃厚接触者の休業、新型コロナ関連による休業要請や取引先の事業停止等やむを得ない理由により従業員の休業を実施するとき

このような場合、在宅勤務や配置転換を検討するなど、休業を回避するための具体的努力を尽くしている場合、「不可抗力による休業」として法定の「休業手当」の支給義務はないとされる場合があります。

支給義務がない場合には、労使協議のうえ休業への手当を支払うことか望ましいとしています。

 

6.新型コロナに関連し、小学校の休業等に対応するため、保護者である従業員が欠勤するとき

通常の欠勤と同様です。

 

7.従業員が欠勤・休業日に法定の年次有給休暇の取得を希望した時

所定勤務日について、事前に申し出た場合には取得できます。また会社と協議の上、日程を変更する等の対応も問題はありません。先に休業が決まっている日については、本来、年次有給休暇を取得することはできませんが、会社が認めれば取得できます。本人の年次有給休暇申請後、職場の休業が決まった場合等は、必要に応じ、休暇の日程を変更する等、調整なさってください。

ちなみに年次有休消化日については労災保険、健康保険等の給付金を受けられません。