【労務コラム】フレックスタイム制 制度の概要と導入方法
時間外、休日労働を抑制するため、「変形労働時間制」を導入し、業務の繁閑に合わせて勤務スケジュールを設定する、という対策が考えられます。
今回は、従業員に始業と終業時刻の選択をゆだねる「フレックスタイム制」の概要をご紹介します。
変形労働時間制は、対象となる従業員を限定して導入できます。担当する業務や、育児や介護など従業員の事情によって、導入をご検討なさってみてください。
(1)変形労働時間制とは
変形労働時間制は、一定の期間について、期間内の所定勤務時間数を週平均40時間(一定規模、一定業種の事業場は44時間)以内におさえることで、各勤務日、各週の勤務スケジュールをある程度自由に定めることができます。
変形労働時間制には「1か月単位」「1年単位」「1週間単位」「フレックスタイム制」の4種類があり、それぞれ就業規則への規定や労使協定の締結、時間外割増賃金の精算方法など、運用の要件が定められています。
(2)フレックスタイム制の特徴
「フレックスタイム制」では、4週間、1か月など、1か月以内の「精算期間」中の「総労働時間」を定めておき、従業員各人がその範囲内で日々の始業・終業の時刻を決めるという制度です。
「本人に仕事の裁量を任せたほうが成果のでやすい仕事」や「一律に勤務時間帯を定めることが難しい職場」に向いています。
一般的には、1日の勤務時間を必ず勤務しなければならない「コアタイム」と、いつ出社しても退社してもよい「フレキシブルタイム」に分ける導入形態が見受けられます。
「コアタイム」は設けなくともかまいません。ただ、「コアタイム」が勤務時間の大部分を占める場合や、「始業時間から8時間の就業を義務付ける場合」などは「フレックスタイム制」とは見なされないことがあります。
(3)フレックスタイム制を導入するには
① 就業規則等への規定と届出
「フレックスタイム制」を導入するには、「就業規則またはこれに準ずるもの」により、始業と就業の時刻を対象となる従業員本人の決定にゆだねることを定めます。
就業規則は、常時雇用10人以上の事業場については作成や変更の内容を所定の手続きにより所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
10人未満の事業場では、作成・届出義務はありませんので、労働時間のルールのみを定めるなど、「就業規則に準ずるもの」によっても問題ありません。
② 労使協定の締結
次の内容を書面の「労使協定」※に定めます。労働基準監督署への届け出は不要です。
※「労使協定」とは「労働者の過半数で組織する労働組合のあるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者との書面協定」をいいます。
ア.対象となる従業員の範囲
特定の部署や、育児介護と仕事の両立が必要な方など、限定してもかまいません。
イ.1か月以内の清算期間
給与計算の期間と同じとすることが一般的です。
ウ.清算期間中の起算日
こちらもイと同様です。
エ.清算期間中の総労働時間
いわゆる所定労働時間のことです。期間を平均して週40時間※以内となるよう、つぎの条件式に収まる時間数とします。
※ 常時10人未満の従業員を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業のぞく)、保健衛生業、接客娯楽業については週44時間となります。
清算期間中の総労働時間≦
精算期間の歴日数÷7日×1週間の法定労働時間数
オ.標準となる1日の労働時間
年休を取得した際、何時間分にあたるか明確にするために定めます。
カ.コアタイム(設定する場合のみ)
キ.フレキシブルタイム(同上)
ク.その他
③ その他、不足時間の取り扱いなど
労使協定にはこのほか「協定の有効期限」や「超過時間・不足時間の取り扱い」等を定めます。
「超過時間」については、実労働時間数が総労働時間を超えたときは、超過した時間分の割増賃金を支給します。
「不足時間」実労働時間が総労働時間に不足したときは、次の精算期間の法定労働時間の枠内で繰越すことができます。また「不足時間」分の賃金を控除することもできます。
制度の導入時は、対象となる従業員の勤務実態等を考慮し、十分に検討なさってください。