新型コロナ陽性者等が発生したときの職場対応~インフル流行期を前に再確認~

 今冬は、季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症との同時流行が懸念されています。

 今回の事務所ニュースでは、「新型コロナ陽性者等」が発生したときに職場に求められる対応について、厚労省作成の資料等の内容をご紹介します。冬期を前に再確認のお役に立てば何よりです。

 

ア.新型コロナウイルスの陽性者等が発生した場合における衛生上の職場の対応ルール(例)【厚労省】

 厚労省では、8月7日に職場での感染防止のためのチェックリストや、新型コロナ陽性者等が発生したときの職場対応ルールを例示しています。

 このうち職場対応ルールについては、職場実態に応じて下記を盛り込み、従業員に周知するよう求めています。(一部を抜粋しました。)

1.従業員が陽性者等と判明した時の職場への報告について
    • PCR検査等を実施することが決定した段階で速やかに所属長に報告すること。検査結果が判明時は、速やかに所属長に報告すること。
    • 報告を受けた者は新型コロナ担当部門に報告すること。
    • 健康情報の取扱いは必要最小限の関係者に限ること。
2.陽性者等と判明した時の保健所との連携について
    • 判明時には濃厚接触者の自宅待機等の保健所の指示に従うこと
    • 保健所による積極的疫学調査が実施される場合に備え、窓口担当者を決めておくこと
    • 陽性者等の勤務状況、在籍する部署の座席表、フロアの見取り図を準備しておくこと
3.職場の消毒等が必要になった時の対応について
    • 保健所等から指示があれば従い、特段指示がなければ下記の方法により実施すること
①消毒を行う場所
      • 陽性者等の執務室…PC、電話等の電子機器、本人の椅子、机等接触したと考えられる箇所
      • 会議室、ロッカー室など共有スペース…椅子、テーブル等本人が接触したと考えられる箇所
②使用する消毒液と使用方法
      • 陽性者等の周囲の高頻度接触部位等は消毒用アルコールまたは0.05%の次亜塩素酸ナトリウムによる清拭で消毒する。
      • 陽性者由来の液体の付着箇所は消毒用エタノールや0.05~0.5%の次亜塩素酸ナトリウムで清拭または30分間浸漬する。
③消毒時に使用する保護具
      • 清掃、消毒を行う者は手袋、マスク、ゴーグル等の眼を防護するものなどの保護具を着用する。
      • 清拭には使い捨てのペーパータオル等を用いる。手袋は滅菌したものでなくともよいが、頑丈で水を通さない材質のものを用いる。
④消毒後の手指の衛生
      • 消毒の実施後は、手袋を外した後に流水・石鹸による手洗い、手指消毒用アルコール等による手指の衛生を必ず行う。

 

イ.労災補償と労働者私傷病報告の労基署への提出【厚労省】

 ①医療従事者等は業務外の感染が明らかな場合を除き、原則として労災給付の対象となります。また②医療従事者以外で、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していることが明らかな場合や、③同じく医療従事者以外で感染経路が特定されなくとも感染リスクが相対的に高いと認められる業務により感染した蓋然性が高いと認められる場合も労災給付の対象となります。

 新型コロナ感染が業務災害と認められた場合、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署への「労働者私傷病報告」を提出する必要があります。

 

ウ.発熱や風邪症状のある人・感染した従業員の職場復帰の目安(職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド)【日本渡航医学会・日本産業衛生学会】

 日本渡航医学会と日本産業衛生学会は今年2月以降、新型コロナウイルスに関する情報を公開しています。現在は「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」の8月11日付の第3版が最新版としてホームページに掲載されています。

 この文書の「3.職域における対策」には、感染または感染の疑われる従業員の職場復帰の目安について、下記の様に具体的な基準が示されています。

1.「発熱や風邪症状を認める者」の職場復帰の目安

新型コロナウイルス感染症との診断に至らず解熱または症状が軽減した者の職場復帰の目安は、つぎの1および2の両方を満たすこと

      1. 発症後に少なくても8日経過している。
      2. 薬剤を服用していない状態で解熱後および症状消失後に少なくても3日経過している。

※「薬剤」=解熱剤を含む症状を緩和させる薬剤、「症状」=咳・咽頭痛・息切れ・全身倦怠感・下痢等、「日数」=発症日、解熱日等を0日として数える。

2.「感染した従業員」の職場復帰の目安

  職場復帰の目安は、つぎの1)および2)の両方を満たすこと

      1. 発症後に少なくても10日経過している。
      2. 薬剤を服用していない状態で解熱後および症状消失後に少なくても72時間経過している。

※症状が中等度以上だった場合や入院していた場合は、体力の低下などが懸念されるので、主治医と相談のうえ職場復帰を行うこと。
※復帰後1週間程度は、毎日の健康観察、マスクの着用、他人との距離を2m程度に保つなどの感染予防対策を徹底し、体調不良を認める際には出社させないこと。

 

エ.職域における感染予防や消毒などの基本的な考え方(職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド)【日本渡航医学会・日本産業衛生学会】

 ガイドには、「発熱または風邪症状のある従業員対応」「職場の消毒」「職場の感染予防策」「感染した従業員への対応」について基本的な考え方が示されており、大変参考になります 。

 たとえば消毒に使う消毒液の濃度や消毒の手順、従業員の検温などのモニタリング方法、ソーシャルディスタンシングの具体的な事例など、前出の厚労省の資料よりも踏み込んだ対応が 簡潔かつ詳細に記載されています。