新型コロナウイルスに関するQ&A(企業向け) ~テレワーク、助成金等(抜粋)~

 厚生労働省は新型コロナウイルスに関して企業向けにQ&Aを作成し、ホームページで公開し、頻繁に更新しています。

 今回はこのQ&Aから、主に「テレワーク等の柔軟な働き方」「助成金」について一部を抜粋してご紹介します。労務管理のご参考になれば幸いです。

※記事は3.30付で更新されたQ&Aを反映しています。

1.感染防止に向けた働き方 ~テレワーク~

 Q&Aでは、テレワーク(情報通信技術を利用した事業除外勤務)の資料として、厚労省の『テレワーク総合ポータルサイト』や、「テレワーク相談センター」のフリーダイヤル(0120-91-6479)の電話番号とメールアドレス等を公開しています。

 またテレワーク導入時の労働時間管理等の留意事項をまとめたガイドラインを紹介しています。以下、簡単に概要をご紹介します。

【テレワークの適切な導入及び実施のためのガイドライン(概要)】

 テレワークの種類

 通勤不要の「在宅勤務」、通勤時間を短縮できる「サテライトオフィス勤務」、勤務場所を自由に選べる「モバイル勤務」が挙げられています。

 

 テレワークの労務管理

 テレワークを行う労働者にも、労働基準関係法令(労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法など)が適用されます。

 

 テレワークと労働基準法

 テレワーク開始時にはテレワークの場所を明示しなければならず、また使用者が労働時間を適正に把握しなければならないとしています。

 労働時間の適正な把握については、厚労省による「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によることとしています。

 同ガイドラインでは、労働時間はタイムカード、ICカード、パソコンの使用履歴などの客観的な方法で記録することを原則とし、やむを得ず自己申告制による場合も必要に応じて実態調査を行うこと等をもとめています。

 

 テレワークで生じやすい「中抜け」「移動時間」

 在宅勤務では、一定程度、労働者が業務からはなれる「中抜け時間」が生じやすいとして、「使用者が業務の指示をせず、自由利用が保証されている」場合は「休憩時間」 「時間単位の年休」として扱うことが可能としています。

 また、通勤時間や移動時間中のテレワークは、使用者の指揮命令下(事実上の命令を含む)で行われる場合、労働時間にあたるとしています。

 一方、勤務時間の一部をテレワークで行う場合の「テレワークの地への移動の時間」は、「使用者の命令によらず」「労働者本人の都合で移動し、自由利用が保証されている場合」は休憩時間とすることが可能としています。

 

 フレックスタイム制の導入

 テレワークであってもフレックスタイムの導入は可能としています。フレックスタイムは始業・終業の時刻の決定を労働者に委ねる制度ですので、労働者が自分で1日の勤務時間の長短を決めることができます。

 ただ、この場合も使用者には労働時間の適正な把握義務が課せられます。

 

 事業場外みなし労働時間制、裁量労働制の適用

 「事業場外みなし労働時間制」は、「ア.労働者が労働時間の全部または一部を事業場外で業務に従事した場合」で「イ.使用者の具体的な指揮命令が及ばず、労働時間を算定しがたいとき」に一定の時間を働いたものとみなす制度です。

 テレワークでこの制度を適用するには、下記①②のどちらの条件も満たしている必要があります。

① 「使用者の指示により情報通信機器を常時通信可能な状態におくこと」とされていないこと

② 随時、使用者の具体的な指示に従って業務を行っていないこと

 このほか、専門業務型および企画業務型の裁量労働制の対象労働者についても、テレワークを行うことが可能とされています。

 これらの制度が適用されている場合、使用者は労働者の健康確保のため勤務状況を把握し、適切な労働時間管理をしなければならないとしています。

 

 時間外休日労働の管理、長時間労働の抑制策など

 テレワークであっても、実労働やみなし労働時間が法定労働時間を超える場合、割増賃金の支払い等が生じるとしています。

 また長時間労働の抑制策として、①メール送付の抑制 ②アクセス制限 ③テレワークでの時間外・休日・深夜労働の原則禁止 ④長時間労働をするものへの注意喚起 等が挙げられています。

 

※以上、厚労省によるガイドラインの抜粋でした。全文やリーフレット等はウェブでご覧ください。

 

2.感染防止に向けた働き方~時差出勤~

 このほか、Q&Aは感染防止のための時差出勤導入について、使用者と労働者の合意により始業・終業の時刻を変更することが可能としています。前出のフレックスタイム 制によっても対応可能と言及しています。

 

3.雇用調整助成金の特例措置

 Q&Aでは、今般の事態に対する助成金の特例措置も紹介されています。

 「雇用調整助成金」とは「経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得なくなった事業主」が、「一時休業や教育訓練、出向」により従業員の雇用を維持したときに、休業手当など賃金の一部を助成する制度です。

 今回の特例措置では、「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主」を対象に、雇用調整助成金の支給要件が緩和されました。概要は以下のとおりです。

① R2.1.24~5.31まで休業等計画届の事後提出可能

② 生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮

③ R2.1.24時点で事業所設置後1年未満の事業主も助成対象

④ 最近3か月の雇用量が対前年比増でも助成対象

⑤ 休業等の初日が1.24~7.23であれば助成対象

⑥ 新規学卒者など雇用保険被保険者としての勤続期間が6ヶ月未満の労働者も助成対象

⑦ 過去に受給したことのある事業主のうち前回の支給期間満了日から1年を経過していなくとも助成対象。過去の支給日数に関わらず今回の支給限度日数まで受給可能

 

4.新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金

 Q&Aでは新設の助成金も紹介されています。

 「R2.2.27~3.31の間に新型コロナウイルスの感染拡大防止策として小学校等が臨時休業等した場合」等に、「その子の保護者である労働者に年次有給休暇以外の有給休暇を取得させた事業主」に助成する制度です。

 「臨時休業等」は、自治体や放課後児童クラブ、保育所等から利用を控えるよう依頼があった場合が含まれます。

 また「小学校等」には特別支援学校、放課後児童クラブ、 放課後デイサービス、幼稚園、保育所、認可外保育施設などが含まれます。

 また新型コロナウイルスに感染または感染した恐れのある子の世話を保護者として行うことが必要となった労働者に同様の有給休暇を取得させた事業主も、制度の対象となります。

 金額は有休を取得した労働者に支払った賃金(日額換算賃金額上限8,330円)×有休日数です。