マイナンバー制度の導入を前に3 ~マイナンバー収集後の安全管理と委託~

 中小規模の事業所など、十分な人員や準備期間を割けない状況であっても、番号法の求める規制に例外はなく、法規制に従ってマイナンバーを適正に取扱う必要があります。

 今回は先月ご紹介した事業所に求められる対応について、実務的な側面を検討します。

(1)従業員への周知を徹底する

 送付された通知カードが確実に保管されるよう、従業員に周知を図る必要があります。
政府では個人向けにも各種のパンフレットを作成し、ホームページで無償で公開しています。
事業場内に掲示する他、リーフレット形式のものを配布するなどの対応が考えられます。

 

(2)収集前にまず確認すること

 マイナンバーの収集と、それ以降の管理について組織として取り組む上で、次の3つの作業が欠かせません。

 ① マイナンバーを取扱う事務の明確化
 ②(マイナンバーを内容に含む)特定個人情報の範囲を明確化
 ③ 特定個人情報を取扱う担当者を明確化

 

(3)実際の収集方法を検討する

 民間事業者では、法律で限定された「税と社会保険手続」に使用する場合のみマイナンバーを収集することができ、利用目的をあらかじめ特定し、公表または本人に通知する必要があります。
また収集時には、なりすましを防ぐため、厳格な本人確認が求められます(従業員で身元確認済みの場合は番号のみ確認することとされています)。
収集は対面による他、証明書のコピー等を同封して郵送する方法などが想定されています。
 なお国民年金第3号被保険者の手続について、従業員が配偶者のマイナンバーを会社に提出するケースは、従業員が配偶者の代理人として会社に提供するケースにあたり、代理人による提供の場合の所定の本人確認を行うか、本人確認の事務を従業員に委託するといった手順が必要となります。

 

(4)収集後の管理方法を検討する

 マイナンバーと(マイナンバーを内容に含む)特定個人情報の取り扱いは、収集後の保管、利用・提供(手続等)、廃棄の段階についても厳格に法律で規制されており、利用履歴の記録と保存も必須となります。
マイナンバーの取扱が始まった後は、どのような事業所であっても、政府の公表しているガイドラインに沿った形式で(業種や取扱い事務の内容に応じて適正に対応することされています)組織体制を整え、安全管理措置を採ることが求められます。
アルバイトやパート従業員を多く雇用する会社など、扱うマイナンバーや特定個人情報の件数が多い事業場では、事務的に大きな負担が生じることも考えられます。

(5)マイナンバー取扱事務の委託

 番号法では、社内で従業員のマイナンバーを管理するケースの他、税理士や社会保険労務士など、外部事業者への委託も想定されています。
従来通り専門士業へ手続事務を委託する方法の他にも、クラウド業者等へ収集から保管、廃棄まで委託する方法も想定されており、広告宣伝も盛んなようです。
マイナンバー制度で民間事業者に求められる対応を「外部への委託」という切り口で検討しますと、次の内容に大別できるように考えられます。

組織体制の整備と運用=助言や規程作成、士業、コンサル等
適正な収集=収集代行サービス等
適正な利用・提供(手続事務など)=士業等
適正な保管・廃棄(履歴管理を含む)=士業、保管サービス等

 税理士や社会保険労務士に事務手続きを委託する場合、士業側でも同様の安全管理措置を実施しているため、「保管・廃棄」のニーズにも応え得ることが想定されます。必要に応じてこれらのサービスを(部分的にでも)利用することも検討なさってみてください。

※ マイナンバー取扱事務などを委託する場合、委託者には委託先で委託者が果たすべき特定個人情報の安全管理措置と同等の措置が講じられるよう必要かつ適切な監督を行う義務が課されています。適切に監督するために必要な措置を講じず、または必要かつ十分な監督義務を果たすための具体的な対応をとらなかった結果、特定個人情報の漏えい等が発生した場合、番号法違反と判断される可能性があるとされています。【特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)より】

(塩澤)

【訂正とお詫び】
先月2015年7月号にて、給与所得者の源泉徴収票について、今年27年分からのマイナンバー記載を前提とした記述がありました。実際には来年28年分からですので、お詫びの上訂正させていただきます。
このほか、28年分の扶養控除等異動申告書への記載が求められるため、今年の年末調整の作業にともなう収集が想定される点は記事の主旨の通りです。