マイナンバーカードが3月下旬から保険証の代わりに~被保険者はカード取得、窓口はカードリーダー設置が必要~(厚労省)

 厚生労働省によると、政府はマイナンバーカードを保険証として使えるよう準備を進めているとのことです。

 開始時期は今年3月(試験運用を上旬から)を予定しており、2年後の令和5年3月には「おおむねすべての医療機関等での導入を目指す」とのことです。医療機関や薬局での受付は、次のような流れになるとのことです。

    1. 受付の際、患者自らがマイナンバーカードを窓口に設置されたカードリーダーに置く。
    2. 「顔認証付きカードリーダー」の場合、「カードのICチップ内の顔写真データと窓口で撮影した顔を比較する顔認証」か、「患者が4桁の暗証番号を入力する」ことで本人確認をする。(「窓口職員の目視」も可)
    3. 「汎用カードリーダー」の場合、「患者が4桁の暗証番号を入力する」か、「窓口職員の目視」により本人確認を行う。

※健康保険の保険証を持参された場合は通常通り、窓口で提示する。(従来通り使用できます。)

 以上のように、医療機関等の窓口でマイナンバーカードを預かることはなく、また、医療機関等がマイナンバーそのものを確認したり、保管することもないとのことです。

 同省はマイナンバーカードを保険証として使用することで、次のようなメリットがあるとしています。

    • 窓口での限度額以上の医療費の一時払いが不要に
    • 過去のデータに基づく診療、処方が受けられる
    • 転職などの際、保険証の発行を待たなくてよい
    • 確定申告(医療費控除)が簡単になる 等

 ただ報道によると、日本国内の対象となる医療機関等約23万施設のうち、カードリーダーの申込み数は今年1月24日時点で25%に留まるとのことです。

 制度の利用には本人の「マイナンバーカード」の取得が前提ですが、交付を受けるには窓口へ出向く必要がある等、煩雑なことから、こちらも普及は進んでいないのが実情です。

 社労士として個人的に懸念が残るのは、マイナンバーカードを保険証のように持ち歩くことにより、紛失が多発するのではないか、という点です。この制度の導入にあたって、政府は協会けんぽや各健康保険組合、国民健康保険から、どれほどの数の保険証が紛失・再発行されているのか、確認しているのでしょうか…。

 マイナンバーカードの表には本人の顔写真と氏名、性別、生年月日、住民票と同じ住所が印字されている他、マイナンバーを記録したICチップが搭載されています。裏側にはマイナンバーがそのまま記載されています。マイナンバーカードを拾った人はこれだけの個人情報を一挙に取得することになります。

 またマイナンバーは、運転免許証の番号のようなカードに付された番号ではなく、本人に付された番号で、住民票コードや基礎年金番号、雇用保険被保険者番号、納税情報といった繊細な情報と紐づけられており、今後は医療、銀行口座等の情報とも連携が予定されています。
これらの情報はマイナポータルというウェブサイトでまとめて閲覧することができますが、この際のログイン手順は、①「マイナンバーカードをカードリーダで読み取り」②「4ケタの暗証番号を入力する」こととなっています。これだけ繊細な情報のパスワードが「半角数字4ケタ」というのも大いに気掛りな点ではあります。

 極端な話ですが、拾ったカードと4ケタの数字があればログインが可能、ということになります。

 これらの問題はマイナンバー制度が導入される前から専門家から指摘されていました。

 本来、「①税・社会保障制度の番号制度」として構想されたものに、「②身元保証制度」や「③国民ID(電子政府等へのログインID)」などの要素が盛り込まれてしまったことで、深刻なプライバシー侵害の懸念が生じてしまっている、というものです。

 情報システム学会理事の八木晃二氏は著書の「マイナンバー法のすべて」(東洋経済新報社/2013年)でこれらの問題を指摘されており、「超ID社会」(専修大学出版局/2020年)では、マイナンバー制度の改善策として、「税・社会保障制度の番号制度」「身元保証制度」「国民ID制度」の3つの制度に分解することを提言されています。

 具体的には「現行のマイナンバーカードは廃棄して、新たに券面番号を記載して再発行する」、「マイナンバーの利用目的を税・社会保障番号としての役割にできるだけ限定する」等といった案が示されていました。

 上記は対案のごく一部ですが、個人的には十分納得できるものでした。皆様はいかがでしょうか?ご興味のある方はご一読なさってみてください。