休日・休暇の違いと割増計算 ~年末年始を前に~
大晦日を控え、多くの職場で「冬期休暇」「年末年始休業」など、長期の休業が予定される時期となりました。 こういった休日・休暇については、通常、就業規則などで「所定休日」や「特別休暇」などの項目で時期や日数などが定められています。 今回は「職場の休日・休暇」について、その違いと実務との関わりについてご紹介します。
1.休日・休暇と割増賃金
一見、同じように思える「休日」と「休暇」ですが、労務管理上は扱いが異なります。 具体的には、「休日」が「そもそも労働する義務のない日」であるのに対して、「休暇」は「本来は労働義務のある日だが(労働者の申請により)その義務を免除した日」とされています。 このため、割増賃金の計算では次のような違いが生じます。
(1)休日を増やすと割増賃金の単価が上がる?
一般的な月給制・日給月給制の割増賃金の時間単価を求める計算方法について、労働基準法施行規則では次のように定めています。
【割増賃金の基礎となる賃金の計算(一部抜粋)】 月で定められているときはその額を月の所定労働時間数で割った額(月によって所定労働時間数が異なるときは年間の月平均所定労働時間数で割った額)
このため「休日」を増やすと、年間を通じた所定労働時間の合計数が減り、月あたりの平均所定労働時間数も減ります。結果的に割増賃金の計算単価は増額することになります。
(2)休暇扱いにした場合の割増単価は?
対して「休暇」扱いとした場合は、所定労働時間数の合計数は減りません。このため「休暇」を増やしても、割増賃金の計算単価には影響がありません。
(3)休日・休暇に勤務したときの割増賃金は?
「休日」の勤務は、事前に振り替えていない場合、所定外の勤務となりますので、所定外・法定外の割増賃金の対象となる場合があります(その職場で採用している労働時間制と休日制度によります)。 一方、「休暇」に出勤した場合は、所定の労働日の勤務となり、通常の勤務として扱われます。 なお、「休暇」を取った日(半日休暇など)に出勤して残業する場合に割増賃金を支払う必要があるかどうかは、実際に労働した時間数で判断します(残業時間分の通常の賃金は支払う必要があります)。
2.休日・休暇の制度
休日、休暇に関する法的な制度を整理しますと、次のとおりとなります。
(1)労基法に定める法定休日とそれ以外の休日
労働基準法では、毎週少なくとも1日休日を与えるよう義務付けており、違反すると罰則が適用されます。 また例外として4週を通じて4日以上の休日を与える変形休日制も認められています。 この休日は法定休日と呼ばれ、出勤すると休日割増賃金の対象となります(事前に振替える場合は除く)。 これ以外の休日は会社等が自由に定めるもので、所定休日と呼ばれ、法律で定める休日割増賃金の対象外です。
(2)法定の年次有給休暇とそれ以外の休暇
「休暇」で一般的なものは労働基準法に定める年次有給休暇ですが、これ以外にも「慶弔休暇」「夏季休暇」「年末年始休暇」や「特別休暇」など、各職場で任意の休暇制度が運用されています(夏季休暇、年末年始休暇については「休日」とされている例も多く見受けられます)。 任意の休暇制度は申請の条件や期限、失効時期を自由に設定できますし、「承認制」「許可制」などとしても差し支えありません(変更の場合、「労働条件の不利益変更」にあたる可能性はあります)。
(3)就業規則の規定の再確認を
以上のように、休日・休暇の取り決めは、割増賃金の単価や支払方法にも関わっています。 お盆休みや正月休みなどを休日・休暇どちらの扱いとすべきか、または年次有給休暇の「計画的付与」の対象とすべきかなど、見直しの際には就業規則の規定や労使協定の締結状況もご確認のうえ、ご検討なさってください。