新型コロナワクチン接種 ワクチン休暇等の導入の動きと厚労省Q&Aの更新(厚労省) 

 5月末現在、医療従事者、高齢者等への接種が進められており、今後、一般の人への接種開始も予定されています。

 こうした中、政府は「職場の新型コロナワクチン接種」について、「接種を受けることは強制ではない」として、接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをしないよう求めています。

 またワクチン接種にともなう健康被害について、労働者の自由意志に基づいて行われることを理由に、業務とは認められず、労災保険給付の対象とならないとしています。※

※ 「医療従事者」「高齢者施設等の従事者」のワクチン接種は、労働者の自由意志に基づくものではあるものの、事業主の事業目的の達成に関わるものであるとして、労災保険上の取扱いでは「労働者の業務遂行のために必要な行為」として業務に該当するものと認められることから、労災保険給付の対象となります。

 新型コロナワクチン接種の副反応としては、接種当日や翌日以降の痛みや発熱、体調不良という例が頻繁に報じられています。

 企業側の対応としては、ワクチンの接種当日や副反応が出た場合の「特別有給休暇制度」や「奨励金支給制度」、「接種時間を勤務時間とみなす制度」等を新設する例が見受けられます。

 政府からは5月13日に経団連に対し、「産業医による職場での接種」「ワクチン休暇の導入」を検討するよう要請がありました。28日には国家公務員、地方公務員へのワクチン休暇(副反応時含む)の導入が発表されています。

 こうした取り組みは、労働者のスムーズなワクチン接種を目的としたもので、「平日の日中に接種を分散し、会場の混雑を避けること」や、「接種当日や翌日の副反応への懸念を和らげること」が目的とされています。

 ただ前述のとおり、ワクチン接種は業務には当たらず、強制することもできません。ワクチン接種を希望しない労働者との公平性や既存の休暇制度の活用を理由に導入を見送るケースも見られるようです。

 こういった動きと並行して、厚労省は5月20日、ウェブサイトの「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業向け)」を更新し、新型コロナワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱いについてのQ&Aを追加しています。以下、抜粋して掲載します。

 

<ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱い>

問20 自社に勤める労働者が新型コロナワクチンの接種を安心して受けられるよう、新型コロナワクチンの接種や接種後に発熱などの症状が出た場合のために、特別の休暇制度を設けたり、既存の病気休暇や失効年休積立制度を活用したりできるようにするほか、勤務時間中の中抜けを認め、その時間分終業時刻を後ろ倒しにすることや、ワクチン接種に要した時間も出勤したものとして取り扱うといった対応を考えています。どういった点に留意が必要でしょうか。

(回答) 職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。

 また、①ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した場合の療養などの場面に活用できる休暇制度を新設することや、既存の病気休暇や失効年休積立制度(失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で療養する場合等に使えるようにする制度)等をこれらの場面にも活用できるよう見直すこと、②特段のペナルティなく労働者の中抜け(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認め、その分終業時刻の繰り下げを行うことなど)や出勤みなし(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認めた上で、その時間は通常どおり労働したものとして取り扱うこと)を認めることなどは、労働者が任意に利用できるものである限り、ワクチン接種を受けやすい環境の整備に適うものであり、一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます。

 こうした対応に当たっては、新型コロナワクチンの接種を希望する労働者にとって活用しやすいものになるよう、労働者の希望や意向も踏まえて御検討いただくことが重要です。

(以上、厚労省Q&Aから抜粋し、当事務所で一部を追記しています。)