新型コロナウイルスに関するQ&A(企業向け)/休業時の賃金等(抜粋)~

 厚生労働省は新型コロナウイルスに関して企業向けにQ&Aを作成し、ホームページで公開しています。
 ホームページの内容は、随時更新されています。

 今回は政府の基本方針が発表された2/25付の内容のうち、主に労働者を休業させた時の賃金の支払いについて抜粋してご紹介させていただきます。

 労務管理のご参考になれば幸いです。

 

1.新型コロナウイルスに関連する休業と「休業手当」

 2/25付Q&Aでは、新型コロナウイルスに関連する欠勤中の賃金の取扱いについて、「労使で十分に協議し、労働者が安心して休暇をとれる体制を整える」よう求めています。

 また「欠勤中の賃金の支払いの必要性の有無」に関連して、労働基準法26条の「休業手当」の定めについて解説しています。

 休業手当の制度は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は休業の期間中、平均賃金の平均賃金の100分の60以上を支払わなければならないというものです。(休業期間=休業した勤務日を指し、休日は含まない。)

 一方、「不可抗力による休業」の場合には、休業手当の支払い義務はありません。

 この場合の「不可抗力」とは、「①原因が事業の外部で発生した事故であること」「②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること」の2つの要件を満たす必要があるとされています。

 2/25付のQ&Aでは、例えば「自宅勤務等が可能な場合には十分に検討する」等、労働者の休業を回避するよう「通常使用者としておこなうべき最善の努力」を尽くしていないと認められた場合は休業手当の支払いが必要となることがある、としています。

 

2.新型コロナウイルス感染者を休業させる場合の休業手当

 2/25付Q&Aでは、労働者が新型コロナウイルスに感染し、都道府県知事が行う感染症法上の「就業制限の勧告」の対象となったことを理由に休業させる場合は、一般的には「休業手当を支払う必要はない」としています。

 この場合、協会けんぽ等、被用者保険に加入している方の休業中の所得補償として「健康保険傷病手当金」の制度を紹介しています。

 

3.感染が疑われる方を休業させる場合の休業手当

 2/25付Q&Aでは、風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさや息苦しさがある場合には最寄りの保健所等に設置される「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせることとしています。

 また高齢者や基礎疾患がある方、透析を受けている方や免責抑制剤・抗がん剤等を用いている方で、これらの状態が2日程度続く場合は同じように相談するよう求めています。

 これらの帰国者・接触者相談センターへの「問い合わせの結果を踏まえても職務継続が可能とされる方」である労働者について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「休業手当の支払い義務がある」としています。

 

4.発熱がある方の自主的な休業と休業手当

 2/25付Q&Aは、労働者が発熱等の症状のため自主的に休んでいるケースについては、通常の病欠と同様に取り扱うことを想定しています。

 一方、例えば37.5度以上の発熱など一定の病状があることのみを理由に「一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合」のように使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には休業手当を支払う必要がある、としています。

 

5.事業の休止にともなう休業と休業手当

 2/25付Q&Aは、「新型コロナウイルス感染症によって事業の休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業とする場合」について、労使がよく話し合って労働者の不利益を回避することが大切としつつ、「不可抗力による休業の場合には休業手当の支払い義務はない」としています。

 具体例として「海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合」を挙げて、「当該取引先への依存の程度」「他の代替手段の可能性」「事業休止からの期間」「使用者としての休業回避のための具体的努力」等を総合的に勘案し、判断する必要があるとしています。

 

6.年次有給休暇の取扱い

 2/25付Q&Aは、「新型コロナウイルスに感染している疑いのある」労働者を一律に年次有給休暇を取得したこととする取扱について、使用者が年次有給休暇を一方的に取得させることはできないとしています。

 

7 .当事務所から補足

 以上、2/25付Q&Aから休業と賃金の扱いについて抜粋し、ご紹介させていただきました。

 当面は、「風邪の症状があるが新型コロナウイルスへの感染の有無は不明な労働者の休業」や「無症状ではあるが感染の恐れがある労働者の休業」といった事態が今後多く生じることが予想されます。

 これらのケースについては、上記2~4を参考に、「風邪の症状により労務提供が不能な期間や医師の指導等により自宅待機とされた期間は欠勤」として扱い、「それ以外の事業所の自主的な判断による休業を休業手当の対象」とすることとなります。

 その他、年次有給休暇について、休業期間中、本人が消化を希望した期間について付与することには問題はありません。昨年4月からの年休の時季指定義務制度による年休付与日の指定の余地のある方に対しては、本人の意思を確認したうえで、同制度による時季指定を行うこともご検討ください。

 

 本稿は以上のとおりです。

 全国一律の休校要請により、事業所によっては、感染予防の他、人員の確保、労働者(とお子さん)への配慮とさらにハードルの上がった状況となりました。当事務所でお役に立てることがありましたら、ご相談ください。