年間平均額による社会保険料決定 ~昨年10月から随時改定も~
1.通常の社会保険料決定の仕組み
健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料といった社会保険料は月々の給与額と直接連動して計算されるのではなく、月々の「標準報酬月額」にもとづいた額となっています。
この「標準報酬月額」は、資格取得時の他、毎年の定時決定と随時改定等で決定されています。
このうち「定時決定」では毎年4月から6月の3ヶ月間、「随時改定」では固定的賃金の変動があってから3ヶ月間のそれぞれの平均月額をもとに新しい標準報酬月額が決められ、社会保険料が改定されます。(随時改定では、変動幅や変動の内訳により改定しない場合もあります。)
新保険料は、定時決定では毎年9月分から、随時改定では変動から4ヶ月目分から適用されています。
2.実際とかけ離れた社保料が算定されるケース
定時決定や随時改定の仕組みは、社会保険料が実際の報酬額とかけ離れたものとならないようにするためのものですが、例えば毎年4月から6月に季節的な業務が発生するような職場では定時決定による社会保険料が繁忙期の賃金をもとに決定されてしまい、会社・被保険者の負担が大きくなります。
また固定的賃金の変動時期が、同じように季節的に変動的な賃金が増加する時期と重なった場合も、同じ問題が生じます。
3.年間平均額による社保料決定~定時決定~
こういった事態を避けるため、定時決定においては、
①4月から6月の3ヶ月間の平均による標準報酬月額と、前年7月から当年6月までの1年間の平均による標準報酬月額の間に一定の差(標準報酬等級2等級以上)があるときで、
②その差が業務の性質上、例年発生する見込みがあるときに、
③被保険者の同意が得られれば、前年7月から1年間の平均による標準報酬月額で決定することができる制度があります。
届出にあたっては、「事業主の申立書」と「従業員の同意」の書面を添付する必要があります。
4.年間平均額による社保料決定~随時改定~
昨年10月からは、随時改定でも同様の制度が導入されています。
随時改定においては、
①通常の随時改定に該当しており、
②この通常の随時改定による標準報酬月額と、「固定的賃金の変動後の3ヶ月間の固定的賃金の平均月額」と「過去1年間の非固定的賃金の平均月額」を合計した額による標準報酬月額の間に2等級以上の差があるときで、
③なおかつ、この差が業務の性質上、例年発生することが見込まれ、
④現在の標準報酬月額と年間平均額による標準報酬月額の間に1等級以上の差がある場合に、
⑤被保険者の同意を得られれば、年間平均額をもとに随時改定をすることができます。
届出の際には、事業主の申立書と被保険者の同意書面が必要です。
②~⑤いずれかの条件を満たさない場合には、年間平均額による随時改定の対象外となりますのでご留意ください。
④の現在の標準報酬月額と年間平均額による標準報酬月額との差が1等級未満のときには、随時改定せず、現在の等級のままとなります。