給与計算のチェック項目 ~「秋期編」最低賃金や社保料等の変更~
月々の給与計算には、さまざまな法律や制度が関わっています。
保険料率や控除額の切替のタイミングは制度により異なりますので、計 算の際には、これまでと同じ方法で問題ないか、チェックする必要があります。
今月は、給与計算についてご相談を受けることの多い内容のうち、秋の時期に特有の項目からまとめました。今後、回を改めて続編を取 りまとめてまいります。
1.最低賃金(地域別)のチェック
地域別の最低賃金は毎年10月頃、改定されています。発効時期は都道府県によりまちまちです(今年の改定の一覧表を同封します)。最低賃金を下回ると、労働基準法や最低賃金法に違反するほか、賃金未払いが生じます。
①給与計算期間中に改定になったとき
発効日以降は、改定後の最低賃金が適用されます。時給額や1時間あたりの賃金額が改定後の最低賃金額未満のときは、発効日以降、最 低賃金額以上の額に改定する必要があります。
たとえば当月は時給額等はこれまでどおり据え置き、不足する差額を別の項目で加算支給する、という方法も考えられます。この場合は、 最低賃金額との差額であることが分かるよう、項目名などにご留意ください。
②1時間あたり賃金額の確認
月給制の場合、最低賃金の対象となる賃金の合計額を「1ヶ月の所定労働時間」で割って求められます。日給制では「1日の所定労働時間」で除します。
最低賃金の対象となる賃金とは、「毎月支払われる基本的な賃金」を指し、次の手当などは除かれます。
【最低賃金の対象外となる賃金】
・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
・1ヶ月を超える期間毎に支払われる賃金(賞与など)
・所定労働時間外労働に支払われる賃金(残業手当など)
・所定休日労働に支払われる賃金(休日割増賃金など)
・夜10時~朝5時の労働に支払われる賃金のうち、通常 の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃 金など)
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当
2.秋の社会保険料額のチェック
社会保険料額はこの時期、算定基礎届による定時決定や厚生年金保険料の料率改定などで変動します。
①9月分厚生年金保険料の料率変更
厚生年金保険の保険料率は、平成17年9月以降、毎年9月に引き上げられ、平成29年9月からは固定されます。当月分の社会保険料を当月給与から引いている事業所では9月支払給与の保険料額から、翌月給与から引いている事業所では10月支払給与の保険料額から変更とな ります。
(協会けんぽの健康保険料率や介護保険料率は毎年3月分から見直されています)
②定時決定(算定)による9月分社会保険料の変更
7月に届出た算定基礎届を受けて、毎年9月に新たに向こう1年間の社会保険料額が決定されます。①の厚生年金保険料の料率改定と同時期ですので、同時にご確認ください。
③8月、9月の随時改定(月変)による社会保険料の変更
5月支払給与の固定的給与の改定により8月に随時改定(月変)となった方や、6月支払給与の同様の改定により9月に随時改定となった方は、②の定時決定の対象外となり、それぞれ8月分、9月分から社会保険料が変更されます。①②同様に、当月分または翌月分の給与から保険料額を変更してください。
(賃金の支払状況により、結果的に随時改定されなかった方は「算定基礎届」の届出が必要です。)
④社会保険料の変更もれがあったとき
給与支払後、健康保険料、厚生年金保険料などの変更漏れが分かったときは、翌月の同じ項目で差額を精算するなど、お早めに対応なさってください。
本人負担分の不足額を精算せず、会社が肩代わりした場合には、その分賃金の支払があったものとされます。
労働保険料や社会保険料の算定、保険給付額など、影響は小さくありません。くれぐれもご留意ください。
(塩澤)