令和3年度の地域別最低賃金改定の目安は全国一律で28円 引上げ率は3.1%(厚労省)

 7月16日、厚労省は令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について、中央最低賃金審議会の答申を公表しました。

 「地域別最低賃金の改定の目安は全国一律で28円」というもので、昭和53年に目安制度が始まって以来、最大の引上げ額となりました。引上げ率は3.1%です。

 審議にあたっては、「最低賃金の引き上げを求める労働側委員」と「現行水準の維持を求める経営側委員」の意見の隔たりが大きく、答申決定の際には異例となる採決が行われました。審議会の委員18人中、経営側委員4名が反対したとのことです。

 答申は他に、特に『業務改善助成金』について具体的な名前を挙げて触れており、「特例的な要件緩和・拡充を早急に行うこと」を強く要望しています。この助成金は事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給されるもので、実際に8月から要件が緩和され、助成内容も拡充されます。


1.最低賃金改定のスケジュール

 今後、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなります。例年、改定後の最低賃金の発行時期は10月となっています。

 東京地方最低賃金審議会では7月21日に地域別最低賃金(時給)を28円引き上げ、1,041円とするよう東京都労働局長に答申しました。同審議会では経営側委員が反発し、6名中3名が採決前に退席し、3名が棄権した等の報道がありました。


2.最低賃金の効力(法的な強制力)

 地域別最低賃金を目安として給与額を決定されている場合、上記発効日以降、改定後の額を下回ることのないようご留意ください。

 仮に最低賃金額を下回る賃金を従業員と合意の上で定めたとしても無効とされ、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされ、差額の支払が必要です。


3.最低賃金に違反した時の罰則

 地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められています。

 また「特定(産業別)最低賃金額」以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。


4.最低賃金に抵触していないかチェックする方法

 最低賃金は一部を除き時間額で定められています。時給制の場合は、単純に比較してチェックします。

 日給制、月給制、出来高払制などの場合、下記のように時間額に換算したうえで、対象となる最低賃金額と比較します。

    1. 日給制の場合 「日給額÷1日の所定労働時間」と比較
    2. 月給制の場合 「月給額÷月平均所定労働時間」と比較
    3. 出来高払制その他請負制の場合 「出来高払制等で計算された総額÷対象となる総労働時間数」と比較
    4. 上記の組み合わせの場合 上記で計算した時間額の合計額と比較

5.最低賃金をチェックする際に計算から除く手当

 時間額に換算する際には、通勤手当、家族手当など計算から除外する手当があります。

 しばしば混同されるようですが、精皆勤手当が除外対象で住宅手当は除外しないなど、「割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当」とは一部異なりますので、ご留意ください。

    1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
    2. 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
    3. 時間外割増賃金、休日割増賃金など、所定労働時間を超える時間や所定労働日以外の勤務に対して支払われる賃金
    4. 深夜割増賃金など、午後10時から午前5時までの間の勤務に対して支払われる通常の計算額を超える部分
    5. 「精皆勤手当」「通勤手当」「家族手当」