最低賃金の減額特例 試用期間の最低賃金は減額できる?

最低賃金の減額特例の制度とは

 最低賃金制度には「減額特例」の仕組みがあり、会社が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金を減額することが認められます。

 この制度は当人の労働能力が一般の労働者より著しく低いなど、最低賃金を適用することでかえって雇用機会が狭められるようなケースを想定し、特例として設け られています。

 

最低賃金減額特例の対象となる人
1.精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い人
2.試(こころみ)の使用期間中の人
3.基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている人のうち厚生労働省令で定める人
4.軽易な業務に従事する人
5.断続的労働に従事する人

 

「試の使用期間中の者」の減額の手続きと実績

 このうち、「試(こころみ)の使用期間中の者」については、最長6ヶ月を限度とし、最低賃金の減額率は20%以下とされています。

 許可申請にあたっては「試の使用期間中の者の最低賃金の減額の特例許可申請書」を作成し、事業場を管轄する都道府県労働局長宛に、所轄の労働基準監督署に提出します。

 もっとも、実際に許可を受けている事例は非常に少ないようです。平成26年に作成された厚労省の資料によると、平成18年から同25年の間の許可件数は6件にとどまっています。

 

 

「試の使用期間中の者」の最低賃金減額特例の条件

 許可の前提となる「試の使用期間」については、「その期間中またはその後に本採用をするか判断するための試験的な使用期間で、労働協約、就業規則または労働契約により定められているもの」とされています。

 また許可の対象は、「試の使用期間」に当人の賃金を最低賃金額未満とすることに合理性がある場合に限るとされています。具体的には次の①②のいずれかが要件とされています。

①その地域(各都県)で、申請のあった業種または職種の本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であること

②その地域で、申請のあった業種または職種の本採用労働者に比較して、試の使用期間中の労働者の賃金を著しく低額に定める慣行が存在すること

 

 その他、この最低賃金の減額の特例となる期間は「その地域でその業種、職種等の実情に照らし必要と認められる期間」で必要最小限の期間とされており、上限は6ヶ月です。

 最低賃金の減額率については、20パーセントを上限として、「本人の職務内容、職務の成果、労働能力、経験などを勘案して定める」こととされています。

 許可申請にあたっては、許可を受けようとする労働者の氏名、性別、生年月日の記載が必要です。また採用前、労働者となる前に申請することはできませんので、ご留意ください。

※この記事は「企業実務」2018年10月号「実務よろず相談室」寄稿記事を再構成しました。