「年次有給休暇取得義務化」と実務対応

 6月に成立した「働き方改革関連法」により、来年の4月1日から、年次有給休暇の取得義務化の制度がスタートします。

 この制度は、年次有給休暇を10日以上付与されている労働者について、会社等(使用者)に対し、使用者に最低でも5日を取得させるよう、義務付けるものです。以下、その内容と実務上の対応についてまとめました。

 

ア.対象となる労働者

 年次有給休暇を10日以上付与される従業員が対象となります。

 パートタイマー等、週所定労働時間数が30時間未満のために、所定勤務日数に応じた日数が付与されている場合も、10日以上であれば対象となります。

 具体的には、週所定労働日数が3日(または年間の所定労働日数が121~168日)のパートタイマー等は勤続5年半、週所定労働日数が4日(または年間の所定労働日数が169~216日)のパートタイマー等は勤続3年半でそれぞれ10日付与され、この制度の対象となります。

 

イ.年次有給休暇を取得させるときの流れ

 実際に10日以上の年次有給休暇が付与された日から1年間の間に、5日以上を取得させなければなりません。取得日数が年間5日未満のときは、法違反となります。

 通常は、労働者が時季を指定して取得しますが、この制度では会社等が時季を指定して取得させることになります。

 時季の指定にあたっては、会社等があらかじめ本人の希望を聴き取り、その意見を尊重するよう努力義務が設けられる予定です。

 

ウ.年次有給休暇管理簿の作成

 労働者各人の取得状況を把握するため、会社等に対し、各人別の基準日、付与日数、取得時季、取得日数を記録する年次有給休暇管理簿の作成が義務付けられる予定です。

 

エ.5日以上取得できなかったときの罰則

 年間に5日以上取得できなかった場合、労働基準法違反として、「30万円以下の罰金」という罰則の対象となります。

 

オ.実務上の対応

 本人がすでに年間で5日以上、取得時季を指定するか、取得している場合や、会社等が計画的に年休を付与する「計画的付与制度」で5日以上の付与が決まっている場合は、会社に対する取得義務は解除されます。

 本人の指定や「計画的付与制度」で5日未満を取得予定か、取得済みのときには、不足分を使用者が指定して取得させれば、同様に取得義務は解除されます。

 実務的には、個別に年間の取得日数を把握し、取得時季を調整する方法のほか、「計画的付与制度」により、あらかじめ年間5日以上の取得日を決めておく方法が考えられます。

 

カ.計画的付与制度について

 ちなみに「計画的付与制度」では、会社等と労働者の過半数代表(または過半数労組)との労使協定で、各人の年次有給休暇のうち、5日超の部分について、取得日を指定することができます。

 ただ、この制度で指定した年次有給休暇については、会社等の都合で時季変更することができないとされています。労使協定に変更の手続きを定めておき、所定の手続きにより変更してください。