情報漏えい・金品の不正持ち出し対策として  『職場の所持品検査』実施前に検討すること

 機密情報の漏えいや金品の不正な持ち出しを防止するために、職員に所持品検査を実施する場合があります。今回は「職場の所持品検査」についてまとめました。

 

(1)職員に所持品検査を実施することは違法か

 事業主が職員に対して行なう所持品検査は、職員の基本的人権を侵害するおそれがあるため、一定の制約のもとで行なわれる場合以外は「違法」とされます。

 具体的には以下の4つの条件が示されています。これらの条件を満たしていれば、代替手段がまったくないといえないとしても、職員は特別な事情のあるとき以外、検査に応じる義務があるとされます。

①所持品検査を行うことに合理的な理由があること。検査が企業の経営・維持にとって必要かつ効果的な措置であること。

②一般的にみて人権侵害とならない妥当な方法と程度であること。

③制度として職員に画一的に実施すること。

④就業規則などの明示された根拠によって実施されること。

 一方、職員から個別に同意を得た範囲で実施する所持品検査については、人権侵害の問題は生じません。
実施に当たっては、①~④の条件を十分に考慮された上で、方法や程度を検討なさってください。

(2)合理的な理由はあるか、方法と程度は妥当か

 実際に検査を実施するにあたっては、「検査に合理的な理由があるといえるかどうか」「検査方法と程度は妥当か」など、十分に留意された上、検討いただく必要があります。

 過去の主な判例では、合理的な理由の有無については、「高価な地金類等が持ち出し可能な状態に置かれている工場の出入り口での守衛による所持品検査」や、「ワンマンバスの運賃横領を防止するための運転手への所持品検査」が認められた事例があります。

 また検査方法については、業務と関連性のない私物を検査したり、身体検査のように社員に多大な屈辱感や侮辱感を与える方法で実施された所持品検査は違法と判断された例があります。

(3)まずは日々の管理の徹底を

 単純な返戻漏れや紛失等は、日常的な備品管理や、機密情報の持ち出しルールを徹底するなどの方法でも予防できます。

 またスマートフォンなどのモバイル端末については、備品、私物を問わず、高機能化・小型化・大容量化が進んでおり、インターネットにも容易に接続が可能なことから、管理にあたっては一層の注意がが必要となっています。持ち込み、利用方法などを厳しく制限する例も見受けられます。

 このように日々の管理を徹底することで、不正な持ち出しや漏えいの機会を限定でき、所持品検査の合理性、有効性も確保できます。

 是非ご検討なさってみてください。

※この記事は「企業実務」2016年7月号「実務よろず相談室」塩澤寄稿記事をもとに再構成しました。