健康保険の被扶養者認定と事実婚・内縁関係について

 健康保険の被扶養者の制度では、被保険者に扶養されている一定の範囲の家族等に対して、保険給付が支給されます。

 昨今、家族のあり方や、被保険者・被扶養者となる方々のルーツが多様化しており、被扶養者となるための認定の基準についてご相談いただくことが多くなりました。

 今回は健康保険の被扶養者の制度について概要をご紹介し、そのうちの内縁関係にある配偶者とその家族との関係について解説します。

1.健康保険被扶養者となる家族の範囲

 健康保家の被扶養者として保険給付が行われる家族の範囲は次のとおりです。

ア.被保険者の直系尊属(父母、祖父母等)、配偶者(内縁関係含む)、子・孫・兄弟姉妹で主に被保険者に生計を維持されている者(同居・別居不問)

イ.被保険者と同一の世帯で主に被保険者に生計を維持されている者(同居必須)

a.アを除く被保険者の3親等内の親族(例:曾孫とその配偶者、配偶者の曾祖父母・叔父叔母伯父伯母・甥姪)

b.内縁関係にある配偶者の父母および子

c.bの配偶者が亡くなった後の父母および子

2.被扶養者となる収入の基準

 被扶養者となる家族に収入がある場合の認定の基準は次のとおりです。

ア.被保険者と同一世帯の場合

 年間収入が130万円未満(対象者が60歳以上または障害厚生年金の受給者に相当する程度の障害者であるときは180万円未満)であって、被保険者の年収の 2分の1未満であること。
または認定対象者の年収が同様であって被保険者の年間収入を上回らず、その世帯の生計の情況を総合的に勘案して被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を 果たしていると認められること。

イ.被保険者と同一世帯でない場合

 年間収入が130万円未満(対象者が60歳以上または障害厚生年金の受給者に相当する程度の障害者であるときは180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ないこと。

3.被扶養者認定事務の厳格化

 昨年2018年10月から、日本国内に住所があって被扶養者の認定を受けようとする人の認定事務については、下記のとおり公的証明書の添付等で確認することとされました。

①身分関係 =公的証明書等で確認する

②生計維持関係

ア 収入 =公的証明書等で確認する

イ 同居 =原則、年金機構が確認する

ウ 別居 =預金通帳等の写し等の添付で確認する

※①についてはマイナンバーの記載と事業主が公的証明書により確認すること(申請書の所定欄にその旨を記載すること)で添付を省略できます。

※②アについては、扶養認定を受ける方が16歳未満のときや、所得税法上の控除対象の配偶者または扶養親族であることを事業主が確認する(申請書の所定欄にその旨を記載する)ときは添付を省略できます。

※②ウについては扶養認定を受ける方が16歳未満のときや、16歳以上の学生のときは添付を省略できます。

 ちなみに海外に在住し、日本国内に住所を有しない被扶養者の認定事務については別途現況申立書の提出が求められるなど、さらに厳格化されています。

4.内縁関係にある配偶者について

 内縁関係とは、婚姻の届け出を欠くが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係をいい、次の要件を備えることを必要とします。

①当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする同意があること。

②当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係があること。

5.被保険者と認定対象者が内縁関係にあるとき

 被保険者の申立のみでは認定されることはなく、必要に応じて以下のような公的証明書により内縁関係が客観的に認められることを確認の上、認定することとされ ています。

①被保険者および認定対象者が重婚などの民法で禁止されている婚姻の要件に該当していないことを確認できるそれぞれの戸籍謄本または戸籍抄本

②被保険者世帯全員の住民票記載事項証明書

 ちなみに「届出による婚姻関係にある被保険者が重ねて認定対象者と内縁関係(重婚的内縁関係)にある場合」について、個人的に資料を探してみたのですが、現在 、明確な判断基準を確認できていません。

 ケースバイケースと思われますが、双方、生計維持要件を満たしている例で、申し立てによりどちらか希望する側一方が加入できる、とする回答も伝え聞いていま す。引き続き、機会がありましたら根拠等、調査してまいります。

6.一夫多妻制の国から来日している被保険者の2人目の妻について

 外国籍(アフガニスタン)の被保険者で、同国出身の妻が被扶養配偶者となっているケースで、新たに入国した2人目の妻を被扶養配偶者とできるかとの質問に対 し、日本年金機構は次の様に回答しています。(2人とも同居しており、外国人登録原票記載事項証明書の続柄はともに「妻」とされています。)

「健康保険における被扶養者の取扱いについても、国民年金第3号被保険者の取扱いと同様、民法を前提としていると考えるのが妥当であり、一夫多妻制が認められている場合の配偶者については、もっとも先行する1名を被扶養者とすることを原則とします。ただし、被保険者と当該被扶養配偶者との関係が形骸化している場合は、それに続く配偶者を被扶養者とすることになります。」日本年金機構「疑義照会回答(厚生年金保険適用)」

 ちなみに「老齢基礎年金の振替加算」「遺族基礎年金の受給権者」「老齢厚生年金・障害厚生年金の加給年金額の対象者」「遺族厚生年金の受給権者」等の生計維 持関係等の認定においては、重婚的内縁関係については法律婚を優先、法律婚が実態を全く失っているときに限り、内縁関係を事実婚と認定する旨の行政の通知が あります。

 同じ通知では、内縁関係が重複している場合については、先行する内縁関係がその実態を全く失ったものとなっているときを除き、先行する内縁関係における配偶者を事実婚関係にある者として認定するとしています。